4.名前
彼 ガイ・セシルはファブレ公爵の命により敵国マルクトに飛ばされたルークを探していたそうだ。
同じく捜索任務に当たっているのは白光騎士団の他、神託の盾主席総長であるヴァン・グランツであるという。
ガイはルークに労わりの言葉を投げかけながら、わざと大げさに肩を竦めてみせた。
「それにしても凄いメンバーだな。マルクトの
「道化人形? って・・・そいつのことかよ?」
「はい。軍人の間ではそのように呼ばれています」
ルークに指を差されたはその言葉を肯定した。
「第三師団に配属され戦場での任務をこなす内に、表情一つ変えずにすべての任務を完遂する不気味さから死霊使いの傀儡、 道化人形と呼ばれるようになりました。恐らく皆さんの知る噂も同じような内容かと思います」
夜風が焚火の火の粉を舞い上がらせる。パチパチと木の爆ぜる音がやけに響く。
「私のことはどのように呼んでいただいても構いません。傀儡でも、道化人形でも、殺戮用音機関でも」
「・・・じゃあ、って呼ばせてもらうよ」
「そうですか」
ガイの目に浮かぶ色には見覚えがある。
には彼の言葉を肯定する以外の選択肢はなかった。
「 さて、お喋りはこれくらいにしましょうか。出てきたらどうです?」
ジェイドの声に、木の陰から戦闘態勢の神託の盾兵が5,6人現れた。
運良くタルタロスに閉じ込められなかった兵士がイオンを取り戻すために追いかけてきたのだろう。
「大佐。ご命令を」
「 全員殺しなさい」
それが合図だったかのように、兵士達は一斉に襲い掛かってきた。
ダダダダダッ
残響が消える頃、その場に立っているのはルークたちだけだった。
少し前まで息をしていた兵士は今はただ地面に同化するただの肉塊と化していた。
「念のため周囲を見てきます。、来なさい」
「承知致しました」
短い返事の後、先に歩き出したジェイドに続く。
一度だけ、武器を構えたままのルークを振り返った。
「誰も居ないようですが、もう少し先まで確認してきましょうか」
「いえ、大丈夫でしょう」
三歩先を行く上司の背を守るように、左後ろには立つ。
二丁の譜銃はその手にあり、必要であればいつでも撃てる。警戒は怠らずにいた。
歩みを止めた上司が振り返る。
蜂蜜色の長い髪が夜風にさらわれていくのと、彼の右手が伸びてきたのはほぼ同時だった。
「血がついていますよ」
そう言って、頬を数回擦られる。
迅速に殺すためにが選んだのは眉間だった。
甲冑を身にまとう相手の一番柔らかい箇所であり、鍛えられず、無防備になっていることが多いからだ。
「失礼致しました。ありがとうございます」
「
「無論です、大佐。私は貴方の剣であり盾 どんな任務も完遂致します」
マルクト軍式の敬礼を返すに、ジェイドの口角はわずかに弧を描く。
頬に置いた手を横にずらし、くすんだブラウンの髪を指先で撫でる。
「それは頼もしいですね。よろしくお願いしますよ、」